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創刊70周年

スペシャルインタビュー

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vol.13 米澤穂信スペシャルインタビュー

米澤穂信

1978年岐阜県生まれ。2001年、第5回角川学園小説大賞(ヤングミステリー&ホラー部門)奨励賞を『氷菓』で受賞しデビュー。11年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長辺及び連作短編集部門)、14年『満願』で第27回山本周五郎賞を受賞。『満願』、15年『王とサーカス』はそれぞれ3つの年間ミステリ・ランキングで1位となり、史上初の2年連続3冠を達成。

〈古典部〉メンバーが、自分自身の問題と向き合うタイミング

構成:瀧井朝世

――古典部シリーズ第6弾『いまさら翼といわれても』がいよいよ文庫化ですね。省エネ主義の高校生、折木奉太郎をはじめ古典部の面々が日常の謎に遭遇する学園ミステリで、本作は彼らが高校2年生の1学期から夏休みに入る頃のエピソードが集められた短編集。彼らの過去あるいは未来に関わる話が多く、内面の転機を迎える予感がありますね。

米澤 古典部の4人が2年生になり、それぞれ人間関係も変化しているし、学んだこともあります。だんだん自分自身の問題と向き合わねばならないタイミングになってきたのではないかなと、1作1作書きながら思っていました。

――シリーズ第1弾『氷菓』の頃から、彼らのこの先を考えていましたか?

米澤 『氷菓』はデビュー前に書いた投稿作ですから、そこまでは考えていませんでした。でも、第2作の『愚者のエンドロール』を書いた時点で、彼らにはそれぞれいつか向き合わねばならない問題があるような気がしていました。古典部の誰にしても、変化せずそのままでいさせることもできると思います。ただ、自分や他者に向き合うことなく時間だけ進めていくというのは、なんとなくかわいそうな気がしました。

――男子2人に関しては将来については茫洋としている一方、女子2人は、伊原には漫画というやりたいことがあり、千反田は豪農の娘で将来家を継ぐといわれていて、対照的ですよね。そこで、それぞれにまた考える時が訪れるわけですが。

米澤 今回、「わたしたちの伝説の一冊」で伊原の漫画研究会の話を書いたことで、よりその対比が鮮明になっていると思います。千反田に関しては、与えられたものを受け入れて生きてきて、そのまま自分の人生を自分で見つめることをせずに大人になることもできたかもしれない。それでも、いつか自分と向き合う時が来るのではないかという予感がありました。

――そうですね、今回、千反田にある転機が訪れる。全6編、異なるタイプの謎が用意されていて読み応えがあります。

米澤 このシリーズは一貫して、これを契機にいろんなミステリを読んでほしいという思いがありますので、いろんなタイプのミステリを織り込んでいくというコンセプトは変わりません。どの作品を織り込んだかをあまり話すとネタバレになりますが(苦笑)。

――どれも、魅力的な謎が見事に解き明かされるだけでなく、それが彼らの人間性の表出に繋がっているところが見事だなと思うんです。

米澤 謎とその解決は、実は人間性を描くものである必要性はないんですよね。ただ、古典部シリーズに関しては、折木なり千反田なりを描く以上、彼らがなぜこの謎を解きたいと思うのかというところは常に意識しなければいけないと考えています。

――高校2年生の夏休みまでの話にした理由は?

米澤 2年生の夏休みっていろいろできるタイミングなんです。高校生活にも慣れてきているし、受験が本格化する前ですし。そこを短編集でさらっと書いてしまうのはもったいない気がしまして、この短編集の話はここでとどめました。

――彼らが1年生だった『氷菓』の刊行が2001年ですよね。『いまさら翼といわれても』の単行本刊行は2016年なので、15年かけて、高校2年の1学期が終了したわけです。私が元気なうちに、彼らは高校を卒業するのかどうか……。

米澤 確かに、時計の歩みが遅くなっていると言われたら一言もありません……。ただ私自身はこのシリーズは時間が進んでいくし、高校生活にも終わりがあると思っています。今回の『いまさら翼といわれても』は高校時代の折り返しを迎え、守られる立場の子供と大人の境目の結節点になるような一冊になったのではないかと思います。

――それぞれの短編について教えてください。第1話の「箱の中の欠落」は、福部里志から夜の散歩に誘われた折木が、生徒会の会長選挙の不正投票の謎について相談されますね。

米澤 これはハウダニットをやりたかったんですよね。単純な仕掛けですが、意外と人の意識の外にあるという……。それと、2人に夜の散歩をしてほしかったというのもあります。

――第2話「鏡には映らない」は伊原の視点。彼女は最初は折木のことを快く思っていなかった。その理由となった中学時代の卒業制作をめぐる出来事と、その真相が明かされます。

米澤 これは折木の中学時代を、別の視点から書こうとしたものです。聞いて調べて足で稼いで情報を集めるという、刑事もののような面白さが出せたらと思いました。

――第3話「連峰は晴れているか」は、折木が、雷に三度打たれたことがあると言っていた中学時代の教師について、誤解をしていたかもしれないと思い、事実を調べようとする。

米澤 実際に、そう言っていた人がいたことから作り上げた話ですね。ミステリとしては、ワンシチュエーションから真相を探っていくという点で、「九マイルは遠すぎる」の形です。

――第4話「わたしたちの伝説の一冊」も、再び伊原視点です。所属する漫画研究会のいざこざに巻き込まれるなか、自分の漫画に対する気持ちを確かめることになる。

米澤 『クドリャフカの順番』で書いた伊原の話をちゃんと着地させたいなと思いました。ミステリ部分で言うと、主人公が姿を見せず、他の誰かが代わりに探偵役を務めるという、シリーズものによくあるスタイルです。折木が昔書いた「走れメロス」の読書感想文が出てきますが、それが真相を暗示している。本人が知らないところで折木が推理しているところがいいのではないかな、と(笑)。

――感想文の折木の鋭い指摘は、ご自身が少年時代に読んで抱いた感想ですか?

米澤 そうですね、「これはおかしいだろう」とは思っていました。そういうことって考えませんでした? 芥川の「藪の中」を読んで真犯人は誰かを考えたりとか……。

――そこまでは……(笑)。さて、第5話「長い休日」では、折木が省エネ主義になった理由が分かります。そういうことがあったのか、と。

米澤 折木が省エネという言葉で自分をガードしているというのは『氷菓』の頃から考えていました。そういう性格の人はどうしたら生きていくのが楽になるのかなと考えると、ある程度予防線を張っておく彼の方法も有効かな、という気はしなくもないですね。

――第6話「いまさら翼といわれても」は市の合唱祭に千反田が現れず、折木が彼女の居場所を推理します。千反田が来ない理由を察して迎えに行く折木の優しさにぐっときます。

米澤 これは場所探しのミステリではありますが、実はまた違う趣向もありますね。『氷菓』の頃の折木だったら居場所をつきとめた後は伊原に任せていたと思います。やはり時間の積み重ねがあって、少しずつ変化している。それがシリーズものを読む面白いところでもありますよね。

米澤穂信 文庫最新刊
『いまさら翼といわれても』
スペシャルコミカライズ!

6月14日に発売の『いまさら翼といわれても』を、笠井スイが冒頭部分をコミカライズ!

『いまさら翼といわれても』

『いまさら翼といわれても』

〈古典部〉メンバーの新たな一面に出会う、瑞々しくも時にビターな短編集。

市が主催する合唱祭の本番前、ソロパートを任されている千反田えるが消えた。以前のえるの様子、伊原摩耶花と福部里志の調査と証言、そして、紛れ込んだ「嘘」――折木奉太郎が導き出し、向かった場所は?

  • 定価:本体680円+税
  • 発売日:2019年6月14日
書籍詳細

抽選で10名様に米澤穂信サイン入り
メッセージカードプレゼント!

応募方法

『いまさら翼といわれても』(角川文庫)の帯についている応募券を郵便はがきに貼り、
①郵便番号 ②住所 ③氏名(ふりがな) ④電話番号 ⑤性別 ⑥年齢 ⑦作品の感想をご記入のうえ、以下のあて先までご応募ください。

応募券見本

あて先

〒102-8078 株式会社KADOKAWA 文芸局「いまさら翼といわれても プレゼント」係

しめ切り

2019年7月31日(当日消印有効)

注意事項

  • はがき1枚につき応募は1口まで。おひとりで複数口の応募が可能ですが、当選は1口のみとなります。
  • 記入漏れや応募券が剥がれている場合、応募をお受けできません。
  • 当選発表は賞品の発送(2019年8月頃予定)をもって代えさせていただきます(発送先は日本国内に限ります)。
  • 賞品の譲渡(転売・オークション出品を含む)をしないことを応募・当選の条件とします。
  • 作品の感想は弊社の出版物や各種PR物に掲載させていただく場合があります。
  • 応募に際しご提供いただいた個人情報は、弊社のプライバシーポリシーの定めるところにより取り扱わせていただきます。

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書き下ろし米澤穂信エッセイ
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角川文庫70周年&
『いまさら翼といわれても』文庫発売記念
米澤穂信サイン会開催!

開催日時

2019年6月23日(日) 第一部:13:00~14:00/第二部:14:15~15:15

会場

紀伊國屋書店 福岡本店

参加条件・応募方法

  • 2019年6月10日(月) 10:00~6月16日(日) 23:59の間、紀伊國屋書店ウェブストアにて申し込んでいただいた方の中から抽選でご招待いたします。
詳細はこちら

米澤穂信 作品紹介

『氷菓』

『氷菓』

大人気シリーズ第一弾! 瑞々しくもビターな青春ミステリ!

何事にも積極的に関わらないことをモットーとする奉太郎は、高校入学と同時に、姉の命令で古典部に入部させられる。
さらに、そこで出会った好奇心少女・えるの一言で、彼女の伯父が関わったという三十三年前の事件の真相を推理することになり――。米澤穂信、清冽なデビュー作!

  • 定価:本体520円+税
  • 発売日:2001年10月31日
『愚者のエンドロール』

『愚者のエンドロール』

未完のミステリー映画の結末を探せ! 古典部シリーズ第2弾!

古典部のメンバーが先輩から見せられた自主制作のビデオ映画は、廃屋の密室で起きたショッキングな殺人シーンで途切れていた。犯人は? その方法は? 結末探しに乗り出したメンバーが辿り着いた、映像に隠された真意とは――。

  • 定価:本体560円+税
  • 発売日:2002年07月31日
『クドリャフカの順番』

『クドリャフカの順番』

米澤穂信が贈る大人気青春ミステリ〈古典部〉シリーズ第3弾!!

文化祭で奇妙な連続盗難事件が発生。盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲。古典部の知名度を上げようと盛り上がる仲間達に後押しされて、奉太郎はこの謎に挑むはめに。〈古典部〉シリーズ第3弾!

  • 定価:本体640円+税
  • 発売日:2008年05月24日
書籍詳細
<古典部>シリーズ特設サイト

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