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角川文庫
創刊70周年
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京極夏彦
1963年、北海道生まれ。94年『姑獲鳥の夏』でデビュー。2004年『後巷説百物語』で直木賞受賞。主な角川文庫の著作に『嗤う伊右衛門』『鬼談』など。
内藤了
長野県出身・在住。デザイン事務所経営。2014年『ON』で日本ホラー小説大賞読者賞を受賞しデビュー。同書に始まる「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズは連続ドラマ化もされた。
京極夏彦×内藤了 特別対談
構成:朝宮運河、撮影:首藤幹夫
京極 内藤さんはデビュー前、僕が選考委員を務めていた『幽』怪談文学賞に応募されて最終選考にも何度か残ってるんですよね。内藤さんの応募作はどれも印象的で、よく覚えています。
内藤 当時はまだ小説のことも怪談のことも、まったく分かっていなかったので……、もしあの段階でデビューしていたらすぐに挫折していたと思います。落としていただいてよかった(笑)。
京極 落としてお礼を言われたのは初めてです(笑)。その後、『ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』で日本ホラー小説大賞〈読者賞〉を受賞された。比奈子シリーズの読まれ方を見ていると、まさに〈読者賞〉にふさわしい作品だったのだなと思います。『ON』は、どの程度ホラーというジャンルを意識してお書きになられたんですか。
内藤 実はまったく意識していませんでした。執筆のきっかけは、テレビで目にした未解決事件の報道なんです。幼い子供が悲惨な目に遭っているのに、犯人がまだ捕まっていないという事実に腹が立って、せめて小説の中だけでも被害者の無念を晴らしたい、と思ったんです。
京極 おや、そうだったんですか。小説を書く動機は人それぞれですが、凶悪犯罪への怒りに突き動かされて、というのは珍しいかも。しかも『ON』は主張を押しつけるようなプロパガンダ小説ではなくて、キャラクターとストーリーで読ませる王道の娯楽小説ですからね。凄惨な犯罪は描かれているけど、後味は決して悪くない。これは貴重な作風だな、と思いました。
内藤 後味のよさは常に意識しています。私は昔から体が弱くて、入退院をくり返していた時期があるんですね。病院では日々の不安を忘れるために、小説をたくさん読みました。作家になった今では、入院中の人たちの慰めになるような面白い作品を書きたい、というのが目標です。

京極 それは素晴らしい心がけですし、比奈子シリーズは実際そうなっていると思います。比奈子は猟奇犯罪に立ち向かう刑事としては意外なほど、常識的な人物として描かれていますよね。どんな事件に直面しても、軸がぶれない。安定感があるんですよ。
内藤 ミステリや警察小説に詳しくないので、ごく一般的な女性を主役にするしかなかった。そこが良かったのかもしれませんね。そういえば、知り合いの娘さんに『ON』を読んで刑事になった人がいるんです。警察学校に入っていろいろ悩んでいる時期に、比奈子の頑張る姿に励まされたらしくて、今は立派に活躍しています。
京極 羨ましいなあ。僕の本を読んでお化けになった人はまだいないですよ(笑)。なられても困るけど。『ON』をシリーズ化して欲しいと言われた時は、どう思われました?
内藤 頭が真っ白になりました。警察関係の知識もないし、一応完結している話ですから、続編なんて無理だろうと。でも仕事なら書くしかないな、とも思いましたね。本業がデザイナーであるせいか、仕事を断るという発想がないんですよ。
京極 よく分かります。僕も同じ業界にいましたから。発注されたら引き受ける、何がなんでも納期は守る。この二つは鉄則ですよね、デザイン業界、いや、一般社会の。
内藤 それでなんとか絞り出したのが2作目の『CUT』でした。最近はキャラクターが勝手に動き回ってくれるので、シリーズを続けるのがちょっと楽になってきた気がします。
京極 いや、勝手に動き回るとは言うけど、それはシリーズの世界がしっかり構築されているからこそですよ。隅々まできちんと作られている小説は、作品の前後の時間を含んでいるものだから、続きが書けちゃうんです。僕が感心するのは、比奈子たちが飲み食いするシーンが毎回きちんと書かれていること。一見無駄な場面のようなんだけど、非日常的な猟奇事件を現実につなぎとめるという重要な役割を果たしていますね。
内藤 飲食のシーンは妙に評判がいいですね。「焼き肉のシーンは必ず入れてくれ」と担当さんにも言われました。
京極 事件が一段落するといつもの日常が待っている。そこで読者もほっとするし、次を読もうかという気になる。このシリーズは長いけど、読んでいて疲れないんですよ。
内藤 嬉しいです。長いといえば京極さんの『虚実妖怪百物語』。あんなに長いのに一気に読めて、さすがのリーダビリティだなと思いました。
京極 無駄に長いだけですよ。あんな内容なのに足かけ6年も連載していたんですから。連載中は震災が起きたり、政権が代わったりと、いろんな出来事がありました。水木しげるさんも亡くなりましたしね。

内藤 私は〈百鬼夜行〉シリーズの榎木津のファンなので、主役の榎木津平太郎を応援していたんです。でもまわりのキャラがあんまり濃すぎて、途中から平太郎の印象が薄れてきた(笑)。この本に出てくる方々は、ほとんど実在するそうですね。
京極 こんなにふざけた人はいないだろう、ツクリだろうと言われるんですがね、残念なことに実在するんです。性格や言動をできるだけ正確に再現しようとしたんですが、おかげでヒドイことになってます。大変なことが起こっているのに、誰も積極的に動こうとしない。これほど書きにくい小説もありませんでした。
内藤 だから後半は京極さん自身が活躍されているんですね。1巻目を読んだ時は、妖怪ファンによる文化祭のような小説だな、と感じました。でも最後まで読んで、これは水木しげるさんに宛てられた長いラブレターだったのか、と気がついた。ラストでは胸がじーんとなりました。
京極 オチはあらかじめ決まっていたわけですが、水木さんが亡くなったことで、見せ方が少し変わりました。ラストといえば、比奈子シリーズも次の『BURN』でいよいよ完結ですね。10巻で完結というのは予定通りなんですか?
内藤 はい。シリーズにするなら10作まで、と最初から決めていました。盛り上がっているところで終わるのがいいなと。『BURN』は各巻のエピソードが少しずつ絡んできて、一種のお祭り的な作品になっています。
京極 少し淋しいですね。内藤さんは、今後書いてみたいものって、あるんですか。
内藤 自ら提案するよりも、編集さんのオファーを受けて、そこからアイデアを膨らませるほうが多いです。自分にできる範囲で、仕事として最良のものを書いていきたいですね。まずは2月、KADOKAWAで新シリーズが立ちあがる予定です。
京極 それこそプロフェッショナル。世の若手作家がみんな内藤さんみたいだったら、編集者も楽なのに。今はあちこちから執筆依頼が舞い込んで大変な時期だと思いますが、どんどん書いて、新しい作品を読ませてください。
内藤 ホラー大賞の〈読者賞〉でデビューさせてもらったことを忘れず、作品で皆さんに恩返しをしていけたらなと思います。いつの日か怪談にも再挑戦してみたい。生と死を描く怪談こそ、人間ドラマの究極の形じゃないかと思うんです。
京極 ぜひ書いてください。楽しみにしています。
抽選で10名様に京極夏彦サイン入り
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応募方法
『虚実妖怪百物語』(角川文庫)の帯についている応募券1枚を郵便はがきに貼り、
①郵便番号 ②住所 ③氏名(ふりがな) ④電話番号 ⑤性別 ⑥年齢 ⑦作品の感想をご記入のうえ、以下のあて先までご応募ください。

あて先
〒102-8078 KADOKAWA文芸局「虚実妖怪百物語 プレゼント」係
しめ切り
2019年1月31日(当日消印有効)
注意事項
- はがき1枚につき応募は1口まで。おひとりで複数口の応募が可能ですが、当選は1口のみとなります。
- 記入漏れや応募券が剥がれている場合、応募をお受けできません。
- 当選発表は賞品の発送(2019年3月頃予定)をもって代えさせていただきます(発送先は日本国内に限ります)。
- 賞品の譲渡(転売・オークション出品を含む)をしないことを応募・当選の条件とします。
- 作品の感想は弊社の出版物や各種PR物に掲載させていただく場合があります。
- 応募に際しご提供いただいた個人情報は、弊社のプライバシーポリシーの定めるところにより取り扱わせていただきます。
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内藤了 作品紹介

『ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』
新しいタイプの警察小説の誕生!
ホラー大賞読者賞受賞!
謎の連続自殺事件。被害者は、かつて自分が犯した殺人事件と同じ手口で死んでいく。事件を追う新人刑事・藤堂比奈子が出会ったおぞましい真実とは!? ホラー大賞読者賞受賞!
- 定価:本体640円+税
- 発売日:2014年10月25日


『BURN 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 上・下』
大人気「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズ、ついに本編完結!
数々の殺人の果てにテロをたくらむ組織は、センターに保護されている天才プロファイラー・保を狙っていた。比奈子は、培養された佐藤都夜の脳と対峙することになり…。大人気シリーズ、ついに本編完結!
- 定価:(上)本体640円+税、(下)本体560円+税
- 発売日:2019年01月24日

『MASK 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』
「藤堂比奈子」シリーズ著者が放つ、
新たなヒロインの警察小説!
東京駅おもて交番で研修中の堀北恵平は、女子っぽくない名前を気にする新人警察官。彼女は駅構内のコインロッカーで、箱詰めになった少年の遺体を発見する。遺体は全裸で、不気味な面を着けられていて……。
- 定価:本体640円+税
- 発売日:2019年02月23日
スペシャルインタビュー
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