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角川文庫
創刊70周年
スペシャルインタビュー
角川文庫とともに歩み、ゆかりの深い著者にインタビュー!
最新刊の冒頭試し読み漫画やメッセージカードのプレゼントも!
辻村深月
1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』でデビュー。12年に『鍵のない夢を見る』で直木賞受賞。18年『かがみの孤城』で本屋大賞受賞。ほか著書多数。
「怖い話は苦手」という方にも、楽しんでいただける一冊です。
構成=朝宮運河、撮影=ホンゴユウジ
――不思議な話、背筋がぞっとする13編を収めた『きのうの影踏み』が文庫になりました。
辻村 日常と地続きのところに潜む、ささやかな怖さや不安を描いた短編集です。ホラー映画のような派手な怖さはないですが、そのぶん「怖い話は苦手」という方にもきっと楽しんでいただける一冊だと思います。
──辻村さんは大のホラー好きで、すでに『ふちなしのかがみ』というホラー短編集も出されていますね。
辻村 『ふちなしのかがみ』も楽しんで書いた作品です。ただ当時は自分の怖さのツボがどこにあるのか、まだ手探りしている状態でした。しばらくして自分が好きなのは都市伝説や学校の七不思議、つまり怪談なんだと気がついた。今回は意図的にそうしたテイストの怖さを並べてみました。
――怪談のどこに惹かれるのでしょう?
辻村 肉声を感じられるところでしょうか。誰かが体験したり見聞きしたりした実話には、作りものにはないリアルさがあります。たとえ尻切れとんぼに終わっても、「本当にあったことだよ」と言われると納得してしまう(笑)。そこは他のジャンルにない、怪談だけの特徴ですね。不思議なリアリティに魅せられます。
――たとえば「手紙の主」は、主人公とその知人たちのもとに、奇妙な手紙が届くという物語です。差出人の意図が明かされず、読んでいて不安になりました。
辻村 結論をはっきり出さなくても、きちんと受け止めてくれるはず、と思えるようになりました。以前より読者を信頼できるようになったのかも。「手紙の主」に限らず収録作は実話がベースになっているものばかり。「私の町の占い師」なんてほぼ出産時の日記です(笑)。どこまで実話でどこからフィクションか、想像しながら読んでいただくのも面白いかもしれません。
――「丘の上」「殺したもの」など、幻想的なイメージに満ちた小品も印象的ですね。
辻村 以前見た夢の風景なども小説の中に散らばっています。学校で追いかけられる怖さを描いた「タイムリミット」もそうです。よく他人の夢の話はつまらないと言いますが、怪談という形でなら作品化できるのが面白いと思います。
――おまじないや噂話に魅入られる少女たちの姿が、「十円参り」「噂地図」などでは鮮やかに描かれます。
辻村 わたしがまさにそういう女の子でした。眠れなくなると分かっているのに、怖い話を読んだり、聞いたりしてしまう。テレビの心霊番組も欠かさず見ていましたね。母親には「またそんなものを見て」としょっちゅう叱られましたけど。
――巻末の「七つのカップ」は、幽霊が出るという現場にわが子を亡くした母親が立ち続けて……という哀切な物語です。
辻村 エンターテインメントとして怪談を楽しむ一方、「その幽霊にも家族はいたはず」という複雑な思いをずっと抱いていて、この作品でようやく形にできました。発表後、ある年配の女性からお手紙をいただいたんです。その方は息子さんを早くに亡くされたそうで、「七つのカップ」を読んだことで息子さんの気持ちを思い、救われる部分があった、と書いてくださっていました。怪談には人の喪失に寄り添う力があるのだということを私も感じ、お手紙を通じて深く感動しました。
――死者と生者をつなぐことができる物語なんですね。
辻村 だと思います。死者は怖いものではなく、懐かしくて身近なもの。そう感じられるようになったのは、わたし自身大切な人との別れを経てきたからかもしれません。「七つのカップ」はそんな死生観を象徴してくれた作品になったと思います。
――ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
辻村 大好きな世界を詰めこんだ、思い入れの深い一冊になりました。辻村深月入門編のような側面もあるので、最近の著書でわたしを知ってくださった方にもぜひ読んでいただきたいです。一編ずつが短いですし、お出かけのお供にしてもらえると嬉しいです。
辻村深月 文庫最新刊
『きのうの影踏み』
スペシャルコミカライズ!
8月24日に発売の『きのうの影踏み』より『十円参り』を、『文豪ストレイドッグス』の春河35&朝霧カフカが冒頭部分をコミカライズ!









『きのうの影踏み』
作品の幅を広げ進化し続ける作家。
大切な人との絆を感じる傑作短篇。
どうか女の子の霊が現れますように。おばさんとその子が会えますように。交通事故で亡くした娘を待ちわびる母の願いは祈りになった――。辻村深月が”怖くて好きなものを全部入れて書いた”という本格恐怖譚。
- 定価:本体560円+税
- 発売日:2018年08月24日
辻村深月サイン入り
メッセージカードプレゼント!
※募集は終了しました
応募方法
『きのうの影踏み』(角川文庫)の帯についている応募券を郵便はがきに貼り、
①郵便番号 ②住所 ③氏名(ふりがな) ④電話番号 ⑤性別 ⑥年齢 ⑦作品の感想をご記入のうえ、以下のあて先までご応募ください。

あて先
〒102-8078 KADOKAWA文芸局「きのうの影踏み プレゼント」係
しめ切り
2018年9月30日(当日消印有効)
注意事項
- はがき1枚につき応募は1口まで。おひとりで複数口の応募が可能ですが、当選は1口のみとなります。
- 記入漏れや応募券が剥がれている場合、応募をお受けできません。
- 当選発表は賞品の発送(2018年10月下旬予定)をもって代えさせていただきます(発送先は日本国内に限ります)。
- 賞品の譲渡(転売・オークション出品を含む)をしないことを応募・当選の条件とします。
- 応募に際しご提供いただいた個人情報は、弊社のプライバシーポリシーの定めるところにより取り扱わせていただきます。
KADOKAWAアプリで書き下ろし短篇『影踏みの記憶』配信中!
KADOKAWAアプリでは辻村深月の書き下ろし短篇『影踏みの記憶』を配信中。本屋さんに行ってもらえるマイルを貯めて、プレゼントと交換しよう!
角川文庫70周年&「きのうの影踏み」文庫版発売記念サイン会開催!
開催日時
2018年9月8日(土) 14時~
会場
星野書店 近鉄パッセ店
注意事項
- ご参加いただくには、整理券が必要です。事前に星野書店 近鉄パッセ店店頭にてお求めください。
辻村深月 作品紹介

『本日は大安なり』
結婚は、人生最高のエンターテインメント!
企みを胸に秘めた美人双子新婦、プランナーを困らせるクレーマー夫妻、新婦に重大な事実を告げられないまま、結婚式当日を迎えた新郎……。人気結婚式場の一日を舞台に人生の悲喜こもごもをすくい取る。
- 定価:本体640円+税
- 発売日:2014年01月25日

『ふちなしのかがみ』
その向こう側は、決して覗いてはいけない――。
冬也に一目惚れした香奈子は、恋の行方を知りたくて禁断の占いに手を出してしまう。鏡の前に蝋燭を並べ、向こうを見ると――子どもの頃、誰もが覗き込んだ異界への扉を、青春ミステリの旗手が鮮やかに描く。
- 定価:本体600円+税
- 発売日:2012年06月22日
スペシャルインタビュー
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