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vol.2 宮部みゆき×澤村伊智 特別対談

宮部みゆき

1960年東京生まれ。87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞。99年に『理由』で直木賞受賞。主な角川文庫の著作に「三島屋変調百物語」シリーズなどがある。

澤村伊智

1979年大阪生まれ。2015年『ぼぎわんが、来る』で第22回日本ホラー小説大賞を受賞。同作は中島哲也監督による映画化も決定している。その他の著作に『ずうのめ人形』『ししりばの家』など。

宮部みゆき×澤村伊智 特別対談

構成=朝宮運河、撮影=ホンゴユウジ

宮部 わたしは日本ホラー小説大賞の選考委員として澤村さんのデビューに立ち会いましたが、こうしてちゃんとお話しするのは初めてですよね。

澤村 あらためて『ぼぎわんが、来る』を選んでくださって、ありがとうございました。

宮部 いえいえ、澤村さんの作品は応募原稿の段階で光っていましたから。今年はこれを推そうと心に決めて選考会に臨んだんですよ。読んでいて驚いたのは前半で起こるあの意外すぎる展開。選考会でも「ここは思い切ったよね」と話題を呼んでいました。

澤村 あそこは苦し紛れというか、技術的な問題があっての展開なんですよ。長編で怖いホラーを書くのは難しい。それで全体を3つのパートに区切ろうと考えたんです。各章で視点人物を変えて、毎回ミステリ的にひっくり返したら面白く読んでもらえるかな、という作戦でした。

宮部 それが見事に決まったんですね。『ぼぎわんが、来る』の主人公はあくまでぼぎわんというお化けであって、登場人物はそれを周囲から支える存在なんですよね。あの構成にして大正解だったと思います。

澤村 とにかく「怖いお化けがやって来た」という話が書きたかったので、そう評していただけると嬉しいです。

宮部 狙いがシンプルで力強かったからこそ、これだけヒットして映画化まで決定したんですよ。今度文庫になる第2作の『ずうのめ人形』も怖いよね~! 人形怪談で都市伝説もの。しかも澤村さんなりのアレンジが施されていて感心しました。これはどこから思いついた話なんですか?

澤村 『ぼぎわんが、来る』の感想をネットで読んでみたら、鈴木光司さんの『リング』と比較して語られていることが多かったんです。じゃあ2作目ははじめから『リング』を意識して書いてやるぞと。どうぞ比較してみてください、というコンセプトでした。

宮部 じわじわと迫ってくるお人形がとにかく怖い! わたしは「人形を部屋に置いている人は読まないほうがいいよ」って薦めていました。知り合いの大学の先生が「夜中読んでえらい目に遭いましたよ」っておっしゃって、しめしめ、狙いどおりだと(笑)。

澤村 ホラー作家冥利に尽きる感想ですね。ぼくはついお化けを強くし過ぎてしまう癖があって、『ずうのめ人形』ではクライマックスに苦労しました。それで毎回あの霊能者姉妹に頼ってしまうんですよ。

宮部 いいよねー、比嘉姉妹。わたし大好き!

澤村 そのうち「強くないのにしっかり怖い」っていうお化けも書いてみたいんです。そのためには語り口や構成でそれらしい雰囲気を作りあげる必要があるんですが、その路線では宮部さんの「三島屋」シリーズという偉大な先例があるから、弱ったなあと(笑)。三島屋での怪談会に漂うムードは絶妙ですよね。ああいう空間をぼくも作りたいんですが、現代ものだと必然性がなくて難しいんです。

宮部 江戸時代の百物語は娯楽であると同時に、教養を身につける場でもあったんですね。地方の藩ではその土地の言い伝えを若者に伝えるために、百物語というツールが利用されていたそうです。でも現代ものでも工夫すればきっと書けますよ。ところで澤村さんはこれまでどんな本を読まれてきたんですか?

澤村 子どもの頃からやっぱり怖い話が好きでした。親にねだって初めて買ってもらった小説が、『ゆうれい屋敷のなぞ』という児童書で、アーサー・マッケンの『怪奇クラブ』を子ども向けに翻訳したものです。UFOとか心霊写真も好きで、その類の本も読みました。佐藤有文さんの『怪奇ミステリー』という本には「人狼」とか「上段寝台」とか、英米名作ホラーのダイジェストが載っていたんですよ。そういうものに夢中でした。

宮部 『怪奇クラブ』に「上段寝台」! なんて由緒正しいホラーのDNAの持ち主なんでしょう。そりゃこういうものを書くはずですね(笑)。

澤村 水木しげるさんの描いた天国や地獄の絵を眺めて、何時間もその世界を空想するような少年。だから宮部さんの『過ぎ去りし王国の城』にはグッときました。絵画に没頭して、異世界に入りこんじゃうってまるで自分のことだなと。

宮部 あれはホラーの定番である絵画怪談を、一度正面からやってみたかったんです。結果的にはホラーというよりファンタジーになりましたけどね。

澤村 物語るということの原点はこの感覚だよな、と。物語を扱った物語ということでは『ずうのめ人形』とも響き合うテーマですし、感じ入るところが多かったですね。

宮部 3作目の『ししりばの家』は幽霊屋敷ものでしたよね。あれを読んで「やられた!」と思ったんです。どこにでもある個人住宅を舞台に幽霊屋敷ホラーを書くのは、当分できなくなっちゃった。

澤村 いわくつきの旧家を舞台にした作品はすでにたくさんあるので、お隣さんでも成立する幽霊屋敷ものを書いてみました。これまで触れてきた映画や小説を参照しながら、どうやって自分なりの個性を出していくのか、毎回苦しんでいるところです。

宮部 個性って案外本人には意識できないものですよ。わたしもよく読者の方に「このへんが宮部節ですね」と感想をいただくんですが、30年やってきて実はどのあたりが宮部節なのか自分では分からない(笑)。同じような作品に影響を受けていたとしても、世代や性格が違えば作品もきっと違ったものになります。澤村さんはすでに澤村ワールドを確立しているので、どんどんお好きなものをお書きになればいいと思いますよ。

澤村 ありがとうございます。なんだか三島屋に相談に来たお客みたいですね(笑)。

宮部 (笑)。次回作のご予定は?

澤村 比嘉姉妹シリーズではない単発もののホラー長編が年内にKADOKAWAから出る予定です。『獄門島』のような感じでオカルティズムを絡めて、と思っているんですが目下難航しまくっていますね。

宮部 わあ、楽しみ。わたしはアラ還になって、これからは自分を育んでくれたものに恩返しするような作品を書いていきたいと思っています。怪獣ものもやりたいんですよね。『荒神』が山から来る怪獣だったから、今度は水から出てくるやつを書いてみたい。

澤村 ああ、それはめっちゃ読みたいです! ぼくも特撮は大好きですし、怪獣ものはいつか書いてみたいんですよ。

宮部 ぜひぜひ、ホラーや怪獣を一緒に盛りあげていきましょう。東日本大震災以降、怪談のもつ力があらためて見直されていますよね。怖いという感情は人間の原点。怖いからこそ畏れることもできるし、敬うことも、大事にすることもできる。もちろん面白いからこそ読みたいし書きたいんですが、生きるうえで大切なことがホラーにはあると思います。

澤村 本当にそうですよね。「怖いって何だろう?」というテーマについて、みんながもっと考えてくれるようになれば嬉しい。そのきっかけになれる作品を、これからも書いていけたらと思います。

宮部 応援しています。ますます忙しくなると思いますから、体に気をつけて。これからも怖くて面白い作品をどんどん読ませてください!

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※募集は終了しました

応募方法

『過ぎ去りし王国の城』(角川文庫)の帯についている応募券を郵便はがきに貼り、
①郵便番号 ②住所 ③氏名(ふりがな) ④電話番号 ⑤性別 ⑥年齢 ⑦作品の感想をご記入のうえ、以下のあて先までご応募ください。

応募券見本

あて先

〒102-8078 KADOKAWA文芸局「過ぎ去りし王国の城 プレゼント」係

しめ切り

2018年7月31日(当日消印有効)

注意事項

  • ※はがき1枚につき応募は1口まで。おひとりで複数口の応募が可能ですが、当選は1口のみとなります。
  • ※記入漏れや応募券が剥がれている場合、応募をお受けできません。
  • ※当選発表は賞品の発送(2018年8月下旬予定)をもって代えさせていただきます(発送先は日本国内に限ります)。
  • ※賞品の譲渡(転売・オークション出品を含む)をしないことを応募・当選の条件とします。
  • ※応募に際しご提供いただいた個人情報は、弊社のプライバシーポリシーの定めるところにより取り扱わせていただきます。

澤村伊智 作品紹介

『ずうのめ人形』

『ずうのめ人形』

その物語は、人を殺す――。
『ぼぎわん』に続く、比嘉姉妹シリーズ第2弾!

オカルト雑誌で働く藤間が受け取った、とある原稿。読み進めていくと、作中に登場する人形が現実にも現れるようになり……。迫りくる死を防ぐために、呪いの原稿の謎を解け。新鋭が放つ最恐ミステリ!

  • 著者:澤村伊智
  • 定価:本体760円+税
  • 発売日:2018年07月24日
特設サイト
『ぼぎわんが、来る』

『ぼぎわんが、来る』

"あれ"からは、決して逃れられない。
稀代の新鋭が放つ、ノンストップホラー

幸せな新婚生活を送る田原秀樹のもとにやってきた、とある来訪者。そこから秀樹の周辺で様々な怪異―後輩の不審死、不気味な電話―が起こる。愛する家族を守るため秀樹は比嘉真琴という霊能力者を頼るが!?

  • 定価:本体680円+税
  • 発売日:2018年02月24日

イラスト:角川文庫70周年ロゴ 「#角川文庫70周年」
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